クロガネ・ジェネシス

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第三章 再び、エルマ神殿にて

 

新たな仲間と旅路



「未熟者である私《わたくし》のせいで、皆様方に多大な迷惑をおかけしたことを深く申し上げます。本来であれば、私《わたくし》の罪は許されてはならない大罪であり、エルマの騎士を名乗ることすら許されることではないでしょう」

 あの事件から一週間。

 ライカ・L・ミリオンはエルマ神殿大聖堂にて演説を行っていた。

 大聖堂はまだ完全に直っていない。かろうじて象徴である蝶を象った十字架が立っているのみで、床や壁がボロボロであることは変わらない。

 ライカさんは自分のしたことを覚えていた。精神寄生虫《アストラルパラサイド》に肉体を乗っ取られていたときも、自分の意識だけは存在していたという。

 目が覚めた直後、ライカさんは自分はここにいるべきではない。自ら役人の元へ赴き極刑に処されるべきであるすら言っていた。

 どうやら精神寄生虫《アストラルパラサイド》による寄生は人間の意識を保ったまま行われるものだったらしく、ライカさんは自分の意識があるにも関わらず、自分の眼に見えている光景が、虚像に見えるような不思議な感覚に陥り、夢と現実の境界が曖昧になっていたらしい。

 しかし、アーネスカ。ひいては多くのエルマの騎士達に説得されたのだ。

 エルマの騎士をやめないで欲しいと。エルマ神殿でもう1度自分達の目標とする存在としていき続けて欲しいと。

 極めつけはアーネスカの言葉だった

『自分が悪いと思うなら、今度はその償いを一生をかけてするべきじゃない? 死ぬなんて簡単な道選ぶよりさ』

 そういわれたライカさんは1つの答えに行き着いた。

「言い訳はしません。私は償わなければならない。自分の無意識下に行われたこととは言え、罪は罪です。ですが、私はその償いを自らの死を持って行うつもりはありません」

 そう言うライカさんの声にはある種の決意があった。

「私は自らの罪を償うため、そしてエルマの騎士たる皆様のために、エミリアス最高司祭様の後を継ぎ、2代目のエルマ神殿最高司祭として今一度! このエルマ神殿にて生きる道を選びたいと思います! 皆様……私と供にもう一度、エルマの騎士として供に歩んでくださいますか?」

 語尾には不安と期待が入り混じっていた。

 無理からぬことだろう。罪を償うために生きる。生きることで償う。それは多くの民衆から死を、罰を受けることを恐れる臆病者の謗《そし》りを受けかねないことだ。

 だが、俺はそれでいいと思う。

 死んでも死者がよみがえることはない。生きている限り罪も消えることはないだろう。

 だけど、自らの意思で償いをしようと思う気持ちがあるのなら、やっぱりその人は生きるべきだ。

 大聖堂内にいたエルマの騎士達はライカさんにどういう思いを抱いているのか。全員の考えは理解できない。しかし、多くのエルマの騎士達はライカの決意を喜んで受け止めるつもりだったに違いない。

 そうでなければ……。

 ライカさんの決意表明の後、多くのエルマの騎士達から拍手が上がることなどないだろうから……。

 俺とネルと火乃木は3階のテラスからその光景を黙って眺めていた。



「お疲れ、ライカ」

「アーネスカ……」

 演説が終わった後、これからエルマの騎士達総出で、再興が始まる。

 一度はエルマ神殿の終わりのときかと思われていた。しかし、ライカが生きることを選択したことで、再びエルマ神殿は活気を取り戻すに違いない。  少なくともアーネスカはそう思っていた。

「アーネスカ……私《わたくし》は……これでよかったのでしょうか?」

 すでに演説を終えた後だというのに、ライカはまだ気にしているようだった。

「まだ、そんなこと考えてるんだ……」

「振り切ることなど出来ませんから。特に自身の罪となると……」

 自分は生きていてもいいのか。今でもそう思う。しかし、多くの人間が自分が生きることを望む。望まれている生であれば、生きていてもいいのだろうか。

 誰も望まない生ならばやはり死ぬべきなのか。それは分からない。

「アーネスカ……私にエミリアス最高司祭様の後釜が務まるでしょうか?」

「それはあんた次第としかいいようがないわ。無責任に出来るなんて、あたしには言えない」

「そうですよね」

「ただ、あたしは思う。生きることを選択した以上、ライカは行き続けなければならないと。行き続けて、それが結果的に償いになるのならそれでいいと思うわ。あんたのことを心から憎んでいるエルマの騎士はいない。だって、あんたは本当に心から悪いわけではないんだもの」

 アーネスカの言い分を聞いて、ライカはそれでも罪は消えない。と言おうとした。

 しかし、やめた。

 そんなことでグジグジといつまでも悩み続けることになんの意味もないと思ったからだ。

「応援してるわ。あんたがライカ最高司祭と呼ばれるそのときがくるまでね」

「ええ、そう呼ばれるに相応しい女になって見せますわ。だから貴方も、頑張ってくださいね。貴方の目的のために」

「ええ……そうするつもりよ……」

 よき友人として、よき仲間として、2人は強く握手をした。



「で、話ってのはなんだ?」

 俺は今エルマ神殿の裏庭にいた。

 裏庭といっても、回りにはこれと言って何もなく、後ろにはエルマ神殿の石の壁、目の前には草原が広がっている。

 アーネスカから話があるとの事で、俺は今ここにいる。何の話なのかはこれから聞くところだ。

「まずは、誤っておこうと思ってね」

「何をだ?」

「乗っ取られたライカが、火乃木にしたこと……」

「ああ……」

 アーネスカの言わんとしていることが理解できた。

 火乃木がエルマの騎士達の前で自らの姿を晒すことになったときのことだ。

「別に構わないさ。それに、火乃木自身も怒ってる訳じゃないし、ライカさん自身、既に火乃木に謝罪の言葉を述べたはずだ」

 あのときのことはライカさん自身覚えていた。ライカさんは目が覚めたとき、真っ先に火乃木に対して頭を下げたのだ。

「それにその話は、火乃木自身もライカさん自身も納得して、決着が付いた話だ。今更掘り返して誤る必要はない」

「そう。それを聞いて安心したわ」

 アーネスカはほっと胸をなでおろすように言う。アーネスカはアーネスカで火乃木のことを考えていたと言うことか……。

「で、本題は? 今の話は前置きみたいなものだろう?」

「結構鋭いのねあんた。前置きと言ってもあたしがあんたや火乃木に対して申し訳なく思っていることは変わりないけどね。聞きたいのは、あんたは何のために旅をしているのかと言うことよ」

「俺が何のために旅をしているか……か」

「そう」

「なぜそんなことを聞く?」

「あら、理由がないと聞いちゃいけないことだったかしら?」

「……別にそういうわけではないけどさ」

 俺が旅をする目的。俺が旅をする理由。

 そんなのは決まっている。

「俺は、人間と亜人の軋轢をなくしたいんだ」

「ほう?」

 俺の言っていることが珍しかったからか、アーネスカは物珍しげな目で俺を見る。少なくとも俺の目的に対して強い興味を引かれたようだ。

「俺は……。上手くは言えないが、罪を犯した。誰かに恨まれ、殺されてもおかしくないような罪を……」

「ライカのように……?」

「いや、もっと酷いことさ。しかも困ったことに、俺自身はなぜそんなことをしなければならなかったのか分からないんだ。だけど、罪は罪だ。俺は何かしらの形でその償いをしたいとずっと思っていた。その目的に、俺は亜人と人間の軋轢をなくし、平和な世界を作ろうと思ったんだ。子供じみているかもしれないし、簡単に出来るわけがない」

 話しながら俺は思う。

 俺一人ではとても出来ないことだと。

「でも、簡単に出来るわけではないからこそ、俺はこの道を選ぶ。俺の世代ではどうにもならなかったとしても、未来にこの思いをつなぐことが出来ればと思う。そして、火乃木のように亜人だからという理由だけで虐げられる亜人も減らせると思うんだ」

「ふ〜ん……。あんたの目的は分かった。でもそれどうやって実現させるつもり?」

 ……その通りだ。

 そもそも俺はどうやってそれを実現させるつもりなのか。目的はあっても手段が見つからない。こんな状態で、俺はどうやって人間と亜人の中を取り持つつもりなんだろう?

「…………」

「どうやってって部分は抜け落ちていたみたいね」

「恥ずかしながらな……」

「なるほどね……。零児、あたしも連れて行きなさい」

「……はあ?」

 突然のアーネスカの提案だった。一体何を言い出すんだこの女は?

「なんでだよ?」

「あたしも、ある意味あんたと同じなのよ」

 途端アーネスカの視線がどこへともなく向かう。その視線が何を捕らえているのか俺にはよくわからない。

「あたしはここにくる前、亜人を憎んでいたわ」

 そして、自分の過去を語りだした。

「ちょっと待った! それは俺が聞いていいことなのか?」

「聞かせたくないことを自分からは語らないでしょう普通」

「まあ……そりゃそうだが」

 俺と共に旅をする理由と目的。それを含んでいる話なのか?

「それに、あんたが旅をする理由を話してくれたのに、あたしが話さないわけにはいかないでしょ?」

 なるほどね、アーネスカなりに筋を通そうってことか。

「もう12年くらい前かな? あたしが10の頃よ」

「ってことは今お前は22……俺より年上か」

「年齢はどうでもいいでしょ!」

「確かに……」

 どうでもいいボケと突っ込みで重くなりそうな空気がやわらかくなったところで、アーネスカは再び話を続ける。

「その頃に、亜人に両親を殺されてさ」

「……」

 思い切った女だと思った。そんな過去をサラッと語れるアーネスカを、俺はうらやましく思う。少なくとも、俺には自分の過去を軽い気持ちで語ることは出来ない。

 いや、軽い気持ちってのとは違うか……。だけどアーネスカみたいな話し方で、俺は自分の過去を語ることは多分出来ない。

「その頃から亜人をこの世から抹殺してやるって気持ちで家出して、色んな所を見て回った。銃の扱いや技術、魔術に関する知識も、その一環で手に入れたものよ」

 世界には人間が亜人のことを極端に憎んでいると言う者も少なくない。

 言うまでもなくアーネスカのように親族を殺されたからと言う理由だってある。いや、むしろそういう理由の方が多いのかもしれない。

「エルマの騎士になったのも、同じ理由。だけど、ここでエルマの騎士として過ごして少しずつあたしの思いは薄れていったわ」

「薄れていった?」

 亜人に自分の親族を殺されたという話は珍しいものではない。アーネスカのように、亜人に対する憎しみを糧に生きている人間がいたってなんら不思議ではない。だが、その憎しみがそんなに簡単に薄れるというのはありえることなのか?

 俺自身、6年経っても自分に対する罪悪感が消えていないと言うのに。

「ごめん。薄れていったってのはちょっと違うかな。正確にいうなら、これでいいのかって思うようになった」

 憎しみ、怒り。それらはとても強い感情だ。強いが故に、すぐに消え去ることもあると思う。同時にその逆もありえると思う。

 人の感情なんていい加減なものだ。気まぐれ1つで簡単に変わる。

 それでも同じ感情を何年も抱き続けるって言うのはそれだけで力がいることだと思う。

 俺も、アーネスカもそうやって生きてきたということなのだろうか?

「あたしだって女だからさ。俗っぽい、世間一般の……女としての欲だってある。普通の女として暮らしたいなって思ったこともあるし、自分の人生を復讐のためだけに使っていいのかって考えるようになった。そして、それをライカがあたしに教えてくれた。そんなときにあんたと火乃木が来た」

「1つ聞いていいか?」

「なに?」

「今もそういう風に考えているのか?」

「いいや……」

 アーネスカはため息をついた。

「あんたと火乃木の姿を見て、あたしは自分がどうするべきか、1つの答えを出せたような気がするのよ。あんた達はお互いが人間と亜人であるってこと、理解してるんでしょ?」

「当たり前だ。火乃木が亜人であることは6年前に出会ったときから知ってたし、俺は火乃木が亜人だからとて差別する気はない」

「そうよね。だから思った。亜人にだって火乃木みたいに純粋に人間と付き合える者がいる。全ての亜人を憎むことで生きてきた自分は間違っていたんじゃないかなってさ……」

「それで……それでお前はいいのか?」

「? どういう意味よ」

 別に亜人を憎むことが正しいとはいわない。アーネスカが亜人を憎んでいて欲しいわけではない。だけど、どうしても気になることがあった。

「今までお前が生きる糧としてきた亜人への憎しみ。それを否定してしまえば、お前は自分で今までの人生を否定してしまうことになるんじゃないかと思ってな」

「へ〜え……」

 アーネスカは目を細める。

 表情がコロコロ変わる奴だな……。

「あんた、変わった考え方してるわね」

「俺もそう思うよ」

「自覚はあるんだ。あんたみたいに他人の人生のことそんなに鋭く考えられる奴、そうそういないわ」

「それは褒めてんのか?」

「褒めてるつもりだけど?」

 褒められている気はしない。だって褒められるようなことではない気がするから。

「安心して、そんなことで自分の人生否定する気はないわ。むしろ大事なのはこれからよ」

「違いない……」

 過去をいくら悔やんでも前へ進むことは出来ない。だったら、悔やむより、未来を見据えて行動するべきだ。

 アーネスカと俺の考え方や性格……。なんとなく似ているような気がする。

「あたしはこれから人間と亜人の軋轢をなくすために旅に出ようと思う。あんたや火乃木みたいに、お互いのことを亜人と人間と分かっていながら、お互いのことを理解できるような……。そんな未来の可能性を信じたくなったから。あたしが今まで手に入れた力はそのために使おうと思う。そして、あんた達の行く末も見てみたくなった」

 え? おいおい! アーネスカの奴、なんか勘違いしてないか?

 俺と火乃木は……そりゃ火乃木は俺のことを好いてくれているけど…………。ああそうか、端から見たら十分カップルだもんな俺ら……。

「だから、あんたらの旅に、あたしも連れてけってわけよ」

「俺は構わんが、火乃木がどういうかはわからんぞ?」

 あいつシャロンが付いてくるって言ったとき大反対してたもんな。

「OK。じゃあ、火乃木にお願いしてみるわ。あたしの話はこれで終わり!」

 アーネスカは体を思いっきり伸ばす。

「あ〜なんか色々しゃべったらすっきりしたわ!」

「すっきりした?」

「自分の過去って、他人に話す機会がないからさ〜!」

 そういうアーネスカの表情はどことなく晴れやかだった。

 つくづく思う。こいつは本当に表情がコロコロ変わる奴だと。

「それとさ、零児。ライカが報酬を払いたいって言ってるんだけど」

「報酬? ああ、そういや忘れてたな」

 金貨90枚の報酬。状況に応じてさらにアップ。だったか。

「別にいいさ。ノーヴァスの館でたっぷりくすねてきたから金欠状態からは脱出できたし、その金はエルマ神殿の再興に当ててくれといっといてくれ」

「それでいいわけ? あんた達が当初考えていたよりずっと苦労したと思うし、その辺りも加味して、たくさん報酬を用意したって言ってたけど?」

「いいんだ。今の俺のポケットに金貨90枚はでかすぎる」

「あっそ? じゃあそう伝えておくけど構わないわね?」

「ああ」

「じゃあ、また後で会いましょう。あたしはエルマ神殿に戻るわ」

「おう」

 アーネスカはそう言ってその場から立ち去っていった。

 人間と亜人の未来……か。

 その軋轢をなくすことが出来たとき、俺は本当に自分の罪滅ぼしが出来たといえるのだろうか?

 俺が選んだ俺の道だ。それを突っ走ることに迷いない。

 だが、その道が間違っていたら?

 ……それこそ瑣末《さまつ》事か。

 俺の俺の道を行くだけだ。



 それからさらに2日後。

「わざわざ馬まで用意するとは。しかも2頭も」

 俺と火乃木とシャロン。さらにネルはエルマ神殿の正門の前にいた。空は晴れている。

 アーネスカは旅をするために2頭の馬とその後ろに俺達が乗るための車を用意していた。長旅になるだろうから普通に歩くよりずっといいだろうと言って。

 車は全体が木で出来ていて、雨風をしのぐための戸がついている。

「まあ、船を使うようなことがない限りは、これを使った方がいいだろうと思ってね。歩いたほうが良いってんなら、あんただけ乗せなくてもいいのよ?」

「誰もんなこと言ってねぇって……!」

「まあまあ、レイちゃん。せっかく用意してくれたんだから心置きなく使わせてもらおうよ」

「まあな……」

 まあ、ゴチャゴチャと口げんかしていても何も始まらない。

 火乃木はアーネスカの提案をあっさり了承したらしい。

 シャロンのときはあんなに反対していたのに、現金な奴だ。

「……すごい」

 一方シャロンは今まで見たこともないような大型の馬を見て驚きと興奮を隠せないようだった。

「そりゃ人間を複数人数乗せるための馬だ、大きめな馬でなければとても動かないだろうからなぁ……」

 そう言って俺は自分の目をネルに向ける。

「ところで……なんでネルはここにいるんだ?」

「え? 私はアーネスカから一緒に旅に出るからついてこないか? って聞かれたから、一緒に行こうって思ったからこの場にいるんだけど?」 「アーネスカてめぇ!」

 俺はアーネスカに怒りの矛先を向けた。

「いいじゃないのよぉ! 旅は道連れ世は情けってね!」

「俺は聞いてねぇぞ!」

「今聞いたわ」

「お前いつか目にものみせてやるからなぁ!」

「そのときがきたらね」

「もう、けんかはよそうよ!」

 火乃木が空気が悪くなるのを回避しようと俺を止める。

「……?」

 ネルは頭の上にクエスチョンマークを3つくらい浮かべている。

 クッ! 今更断るわけにもいかないか!

 なんか、アーネスカに今後ペースを握られそうな気がする。

 当初は俺1人で旅に出る予定だったのに、なんでいつの間にか5人に増えてるんだ? しかも女ばかり4人も。こりゃ肩身の狭い思いをしそうだ……。

「皆さん。準備は出来たようですね」

 そのとき、正門からライカさんが現れた。

「ライカさん」

 俺はその姿を確認して言った。

「鉄零児様、白銀火乃木様。お二方には本当にとんでもない迷惑をおかけしました」

 ライカさんは深く頭を下げた。

「もう終わったことですよ。ライカさん」

 俺は特に強い感情を抱いたわけでもなく、さらりとそう言った。

「そうですよ! 悪いのはやっつけたんだから、それで終わりでいいじゃないですか!」

 火乃木は火乃木で調子のいいことを言ってる。

 お前シャロンが仲間になると言ったときとんでもなく激怒してたことを忘れたか?

「そういっていただけると、私《わたくし》も気が楽です。どうかよい旅になることを、心より祈っています」

「ありがとうございます」

 俺はそう返した。まあ、俺もこの人のことを一方的に犯人扱いしてしまったわけだし、人のことは言えないか……。

 他にも言いたいことはたくさんあった。エルマ神殿はどうなるのかとか、体は本当に大丈夫なのかとか。

 しかし、そんなことを今更ほじくり返す必要はないだろう。

 第一俺が知っていても仕方がないことだ。

「そろそろ行くわよ!」

「おう!」

 俺がそう答え、俺に続いて火乃木、シャロン、ネルが馬車に乗り込んでいく。

「アーネスカ。どうかお気をつけて」

「あんたも頑張ってね」

「ええ」

 アーネスカは微笑で返し、すぐに馬車に乗り込み、手綱を握った。

 そして、馬に鞭を入れ、すぐさま馬を歩かせた。

 これからにぎやかな旅になりそうだ……。

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